2018年09月03日

「フィールド・アシスタント・ネットワーク」のワークキャンプを実施

 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリでは、毎年春と夏に大学生の自然保護ボランティア団体「フィールド・アシスタント・ネットワーク(以下FAネットワーク)」のワークキャンプの受け入れをしています。FAネットワークは大学生が中心となり、自然保護団体への協力、自然保護に貢献にできる人材の育成などを目的として活動している団体です。今夏は8月23日から27日までの5日間、実施しました。

 初日のオリエンテーションでは、タンチョウについての歴史・生態や当会のこれまでの保護活動、冬期自然採食地の保全の取り組みについてプレゼンを行いました。レンジャーの話を真剣に聞く様子から学生たちの熱心さが伝わってきました。

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 2日目は、タンチョウの生息環境や釧路湿原などの現場を車で視察する野外セミナーを実施しました。鶴居村内の農家の方からは日々の暮らしやタンチョウの農業被害、タンチョウに対する思いなど貴重な話を聞くことができました。釧路湿原では木道を散策しながら多様な生きものを観察し、湿原の環境を肌で感じてもらいました。また、大規模な伐採林、湿原の集水域での森づくりや自然再生事業の現場を通して、国立公園の現状や諸問題、保護活動ついても学びました。移動中はタンチョウの親子に何度か遭遇。初めて見るタンチョウに、感動しながら双眼鏡を覗きこむ学生も見られました。

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 3日目は、タンチョウが冬期に給餌場以外で餌を食べられるよう整備してきた「冬期自然採食地」の管理作業に取り組みました。今回作業した採食地(中雪裡1号自然採食地)は2010年に所有者の農家さんに許可を得て整備した小河川です。タンチョウが食べる生きものやその環境について、説明しながら河川を歩きます。ノコギリで水路にかかる低木の枝切りと外敵からの逃げ道を造ることで、あっという間に開けた空間ができました。今年もタンチョウが安心して餌を食べてくれることを願います。雨が降る中での作業で全身びしょ濡れでしたが、学生たちの表情は達成感に満ちていました。夜は懇親会が行われ、地域の方と交流を深めました。

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 4日目は、D型倉庫周辺の補修作業、サンクチュアリの煙突掃除を半日かけて行いました。補修作業ではD型倉庫内への水の浸入を防ぐため、周りの地面が低くなっている所に土を盛ります。普段は使用する機会のないつるはしで土を掘り返す作業に、学生たちは悪戦苦闘。怪我なく無事に作業を終えることができました。サンクチュアリでは冬期に薪ストーブを焚いています。煙突を取り外し、溜まっていた大量の煤をきれいに取り除きました。今年の冬も暖かい館内で過ごしていただけそうです。また、前日に実施した冬期自然採食地の整備について、展示物を作成してもらいました。作業を振り返り、意見を出し合いながら構成や担当を決めていきます。紙芝居のように使用できたり、手書きのタンチョウの絵が描かれるなど、来館者にわかりやすい内容の展示物を作りました。

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 最終日は、インタビューを通して活動の振り返りと記念撮影を行いました。参加した学生からは「自然保護における環境や生きものとの共生の難しさを学んだ」「大学の授業などで色々な立場で物事を考えることはあったが、実際に現場の人の感じていることを聞くことと、自分たちで想像して考えることは体感として違うものがあると感じた」「地元の問題を再認識することができた」「タンチョウについて知らないことも多く、自然保護について考えさせられた」などたくさんの感想を聞くことができました。鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリは、開設時から学生ボランティアをはじめとした多くの方の支えのもと、タンチョウの保護活動に取り組んでいます。参加した学生の皆さんには、今回のワークキャンプで学んだことをどこかで活かしてもらえたらと思います。短い期間ではありましたが、ありがとうございました。お疲れさまでした。
【記:田島】


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posted by 野鳥保護区事業 at 11:14| シマフクロウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月04日

「タンチョウの冬の食事場所を作ろう」のイベントを実施

 7月1日に「日本製紙クレインズの選手と一緒にタンチョウの冬の食事場所を作ろう」を実施しました。クレインズの選手と地元の子どもたちといった地域の人が協力しあい、タンチョウが冬に自然の餌を採れる場所(以下“自然採食地”)の維持管理を行なう活動です。
  はじめに、ネイチャーセンターで自然採食地についてスライドで説明し理解を深めてもらいました。タンチョウが給餌以外に冬に餌を採ることのできる凍らない河川などの環境があること、そこは整備後も数年で倒木や茂った藪が増えるため、出入りできるように繰り返し整備が必要なことを、皆さん熱心に聞いていました。これから行なう活動がタンチョウのためになることを感じてもらえたところで実際に作業場所へ移動します。


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作業前の勉強。自然採食地について学びます。

 当日は雨が降っていたので急遽予定を変更し、短時間で作業を進めることにしました。今回作業する自然採食地には、大きな倒木が1本あります。そのため、枝を払い、ロープで引き上げてからノコギリで細かく切っていく班と、茂っている藪と立木を切る、2班に分かれて作業を行ないました。力持ちのクレインズの選手と元気いっぱいで作業も早い子どもたちのおかげで、あっという間に開けた空間を造ることができました。

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協力して作業を進める選手と子どもたち

 レンジャーは整備した場所を冬にタンチョウが出入り口として利用し、餌を採ることをあらためて伝えました。作業した場所を背景に記念撮影をする頃には雨も弱くなり、皆さん達成感でいっぱいの表情でした。

 最後はセンターに戻り今日のまとめです。まずはクレインズの選手へのインタビューと質問タイム。選手と子どもたちとの距離がより近づいたところで、メッセージカードにタンチョウへの思いと作業の感想、クレインズの選手へのエールを書いてもらい、イベントを終了しました。

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雑談も交えながらタンチョウへのメッセージを考えます。



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思いをひとつに、タンチョウが利用してくれることを祈って記念撮影。

 釧路湿原自然再生普及小委員会の取り組みの一環であるこのイベントは、今年で7回目を迎えます。今回はクレインズの選手や鶴居村の野外活動グループ「サルルンガード」の子どもたちをはじめ、総勢25名でタンチョウの冬季自然採食地の維持管理の作業を行ないました。現在、給餌をはじめ地道な保護活動により1800羽までタンチョウは増えました。一方で給餌場での過密化による感染症への懸念、特定の越冬地への集中、人馴れや農業被害などの問題も深刻化しています。今後の個体数の増加や生息地の拡大にあたり、給餌に頼ることなく本来の生息環境で餌を採れる冬期自然採食地の存在は必要不可欠です。タンチョウが利用し続けていけるよう、今後も地域一体となって自然採食地の取り組みを進めていきます。
                                                                                           【記:田島】





posted by 野鳥保護区事業 at 18:17| シマフクロウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月18日

(株)明治と取り組むエコアップ活動

 6月14日、全国から集まった株式会社明治の社員ボランティア10名の方々と、野鳥保護区の自然環境をより良い状態にするための「エコアップ」活動を実施しました。
この活動は、2007年に当会と同社が協定を結び、2つの野鳥保護区を設置した翌年の2008年から継続して実施しています。

 22回目となる今回は、根室市街からほど近い「明治野鳥保護区牧の内」で、植樹と植栽地の草刈りを行ないました。
当保護区は根室市の取水源となるタンネ沼、オンネ沼を取り囲むように位置しているため、水源となる周辺の森を守り育んでいく必要があります。
当日は天候にも恵まれ、これまでのボランティアで最多となる300本のトドマツ、ミズナラなど5種類の苗木を植えることができました。

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●苗木を植える前に、まずは300個の穴を掘らなければなりません。これが大変!

 保護区では毎年、根室地域の子どもたちを対象に自然観察会と植樹体験を実施していますが、苗木が周りのササや雑草に負けずに成長できるよう、除草を続けなければなりません。
機械を使うと苗木まで刈ってしまう恐れがあるため、鎌を使い手作業で丁寧に刈り取っていきます。
私たちレンジャー3人では膨大な時間を要する作業も、ボランティアの皆さんの力を借りてあっという間に終えることができました。

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●厳しい環境下で苗木はゆっくり成長します。ササ丈を超えるまで、こうした管理作業を続けます。

 作業の合間には保護区を散策し、ハクサンチドリなど初夏の草花、アオジやウグイスのさえずりを楽しみました。
植樹中にも上空をオジロワシやオオジシギが飛び交い、移動中の車窓からもタンチョウのつがいを間近に観察することができ、ボランティアの方々に保護区の豊かな自然を実感していただくことができました。

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●この時期にしては珍しく霧が晴れ、保護区の全景と太平洋まで見渡すことができました。

 当日は強風にも負けず、笑顔で作業を続けて下さったボランティアの皆さん、ありがとうございました!
日々の生活や業務の中で、身近な自然や生きものに目を向けるなど、自然保護を意識するきっかけになれば嬉しく思います。

【荒 記】
posted by 野鳥保護区事業 at 11:37| 野鳥保護区管理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする