2021年05月08日

タンチョウ保護区の巡回

5月6日に、鶴居村内にある古山野鳥保護区温根内の巡回に行きました。
ここは1993年に土地所有者と協定を結んだ12.9haの山林と湿地です。釧路湿原に流れ込むオンネナイ川に沿って、幅200〜300m程の谷状の湿原に3か所ある保護区の1つです。上流部にある別の保護区では一時期タンチョウの営巣が途絶えましたが、ハンノキを伐採しヨシ原を復元する環境管理で、2002年から再営巣が確認されています。このような活動が実り、古山野鳥保護区とオンネナイ川流域の合計3つの保護区を含む126haは、タンチョウの生息環境として、2011年に釧路湿原国立公園区域に追加登録されています。
古山保護区温根内.jpg
丘陵地側から見た保護区

今回は、まだ葉が茂らずに見通しの良い時期を選び、地上からアプローチしました。林道で行けるところまで車で入り、車を降りてから主に針葉樹の植林地を歩くこと30分。湿原を見渡せる丘の縁に出た瞬間、白い影が見えました。双眼鏡で確認すると2羽のタンチョウです。いきなり会えるとは思わなかったのですが、レンジャー2人は感動もそこそこに、タンチョウが2羽の成鳥であることから、時期的にヒナがいる可能性があるため、彼らを警戒させないように、慎重に観察を続けました。
湿原内の白い点2つ.jpg
湿原内の白い点2つ
保護区内のタンチョウ.jpg
保護区内を利用するタンチョウ
(オートフォーカスでピントの合わない写真しか撮れず失礼します)

2羽とも足元を警戒する様子がなく、藪の隙間から垣間見える足元にも、期待する小さな茶色のヒナは見つかりませんでした。30分程の観察で、現時点ではこのタンチョウの繁殖は失敗している可能性が高い、と判断しました。抱卵中、大雨による増水などで巣が水につかり、卵が死んでしまうことがあります。その場合は1ヶ月程間をあけて再営巣することもあります。その頃は葉が茂っているため、ハンノキ林が多いこの一帯での確認は困難ですが、再営巣に期待しましょう。 

調査中のレンジャー.jpg
タンチョウ観察中のレンジャー

丘陵部では30〜40年程のトドマツの植林が多く、今では笹薮と化した伐採時の林道の跡もありました。湿原の縁では、伐られなかったミズナラの大木もところどころに残っています。まだ葉が拡がらない広葉樹の周りでは、この時期にしか届かない光を受けて咲く、ヒメイチゲの小さな白い花がきれいでした。
ヒメイチゲ.jpg
ヒメイチゲ

今年度初めての保護区の巡回で、報告書などのデスクワークに追われる中での、良い気分転換になりました。センターに戻り、現地で拾った羽を調べるとフクロウのものでした。また雨具の胸に上ってきたダニもお土産になってしまい、女性スタッフからひんしゅくを買いました。次の機会では、繁殖に成功したタンチョウの親子に出会いたいものです。【原田記】
posted by 野鳥保護区事業 at 14:57| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする