2024年08月30日

「FAワークキャンプ2024年夏」

 8月19日〜8月23日の5日間、フィールド・アシスタント・ネットワーク(以下、F.A.N)の夏のワークキャンプを実施しました。F.A.Nは、自然保護のために首都圏の大学生が集まって設立されたネットワークです。鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリでは毎年夏と春の2回、F.A.Nに所属する学生のワークキャンプを行なっています。

 今回の主な活動は、ネイチャーセンター内壁のペンキ塗りと老朽化したタンチョウ型凧の修理、そしてタンチョウの冬期自然採食地の整備です。
 ネイチャーセンターの内壁は以前から以前から少し汚れが気になっていたため、この機会に学生たちの若いパワーを借りて、綺麗に塗り替えてもらいました。とはいえ、今まで誰もペンキでの壁塗りを経験したことがなく、かなり手探り状態でのスタートでした。しかし、塗り始めてみると案外順調で、みるみるうちに壁が綺麗に塗り上がっていきました。
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<ペンキ塗りの様子>


学生たちも、普段はすることのない作業を手際よく、楽しそうにしていたのでとても安心しました。
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<意外と楽しいペンキ塗り>


 ネイチャーセンターのペンキ塗りが時間的にかなり余裕をもって終了したので、これも以前から気になっていた、タンチョウ型の凧の修理も学生たちにしてもらいました。この凧はネイチャーセンターの天井からつるしている展示物なのですが、経年劣化により一部穴が開いたり、黄ばんでいたりしていました。
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<劣化したタンチョウ凧>

学生たちの柔軟な頭で考え出された修理方法は、習字の半紙を上から重ね、羽の黒い部分は墨汁で黒く塗るというものでした。
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<貼ったり塗ったりしています>


この方法が成功し、かわいそうなくらい劣化していたタンチョウが、綺麗な白い姿を取り戻すことができました。タンチョウの顔もどこか嬉しそうに見えてきますね。(笑)
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<こんなにきれいになりました!>


 最後の作業はタンチョウの冬期自然採食地整備です。冬期自然採食地とは、タンチョウが冬でも給餌に頼らず自分たちで餌を採れるように当会で整備している水辺のことです。その冬期自然採食地の整備を学生たちと共に実施しました。整備内容は、小川の流れを蛇行させ、環境に多様性を持たせるための堰作りや、エゾアカガエルが越冬するための落葉かごの設置、水生昆虫の隠れ場所となる、かかり木の設置です。
堰作りは以前も違う場所で行っていましたが、今回もさらに多様性を持たせるということで、前回よりも下流側に追加で設置しました。メンバーには一度経験したことのある学生もいたため、かなり手際よく進めることができました。
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<堰作り>


落葉かごの設置は今回の新たな試みです。エゾアカガエルが川底の落葉の下で越冬するという生態を活かし、落ち葉を敷き詰めた網かごを水辺に設置することでカエルの数が増えていかないかと考えています。
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<落葉かご>


増水などで流されないように、堰の下流部など流れの緩やかなところにピンやひもで固定しました。新しい試みのため、どのような結果となるかは今後のお楽しみです。
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<流れの少ないところに固定中>


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<カエルが使ってくれますように>


 以上のように、5日間を通して様々な経験をしてもらいました。活動を終えて感想を聞く中でも「とても有意義な時間が過ごせたと思う」という声が多く聞かれ、学生たちの今後にも繋がる、良いワークキャンプだったのではないかと思います。
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<最後はみんなで集合写真>

posted by 野鳥保護区事業 at 13:16| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月05日

日本製紙株式会社とスポットセンサス調査を実施

当会は、2024年2月に日本製紙株式会社と北海道・道東の森林(約2,000ha)における、「シマフクロウの生息地保全と日本製紙株式会社の木材生産事業の両立に関する覚書」を更新しました。

この覚書を締結した森林に生息する鳥類相を調べるために、日本製紙株式会社の皆様にご協力いただき、6月と7月に鳥類のスポットセンサス調査を行いました。
スポットセンサス調査とは、調査地内に定点を設け、その周辺にいる鳥類を記録する手法です。
この森林では、2016年から4年ごとに調査を実施しており、今年は3度目の調査でした。

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<スポットセンサス調査のようす>

調査結果を見ると、針葉樹林ではヒガラやルリビタキ、河畔林ではセンダイムシクイやキセキレイ、広葉樹林ではアオジやヤブサメと環境によって優占種や出現種が異なることがわかります。
シマフクロウが生息するためには、餌となる魚が獲れる河川、子育てをする樹洞ができやすい広葉樹、冬でも葉が落ちず姿を隠せる針葉樹といった複数の環境が必要です。そして、これらの環境を維持することは、それぞれの環境を利用する他の鳥類の生息地を守ることに繋がるのです。

次回の調査は4年後となりますが、多様な鳥類相が生息できる環境を維持するために活動を続けていきます。



posted by 野鳥保護区事業 at 10:48| シマフクロウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする