2023年03月10日

F.A.N 春のワークキャンプを実施しました

3月2日〜3月6日の5日間、フィールド・アシスタント・ネットワーク(以下、F.A.N)の春のワークキャンプを実施しました。F.A.Nは、自然保護のために首都圏の大学生が集まって設立されたネットワークです。鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリでは毎年夏と春の2回、F.A.Nに所属する学生のワークキャンプを行なっています。

今回の主な活動は、タンチョウが冬でも給餌に頼らず自然の餌を採れるように、と整備している小川(以下、自然採食地)の水生生物調査でした。ワークキャンプ2日目はほぼ終日、魚類調査を行ないました。魚類採集用の網をそれぞれ1本持ち、魚の好む淵(流水が緩やかで深みのある場所)を中心に調査しました。すると、網にはヤマメやハナカジカ、エゾトミヨ、スナヤツメなどの魚類が入っていました。3〜5cmほどの稚魚がほとんどでしたが、中には10cmを超える大物も採れました。今回調査した自然採食地には様々な種類の魚類と育つための環境が整っていることがわかりました。
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魚類調査風景 網で魚の捕獲を試みます

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体長10cm以上のヤマメも採れました!

3日目は、午前中に底生生物調査を行ないました。底生生物調査では、ある地点の底質を掘り起こし、その中に潜む生き物を探し出します。この調査では、たくさんの水生生物を採集することはできませんでした。ところが、去年の夏のF.A.Nの活動で水生生物の住処になればと小石を置いて整備した場所では、個体数・種類ともに整備を行なっていないほかの地点よりも圧倒的に多くの水生生物を採集することができました。これにより、小石を置くなどの整備をすることで自然採食地の環境をより多様にし、様々な水生生物を増やすことができるのではないかと期待が高まりました。

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底生生物調査 底質の中にいる生き物を探します

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前年の夏の整備の様子 小石をたくさん置いていきました

午後は採集できた水生生物の同定を行ないました。カゲロウやトビケラなど、詳しい種名まで同定することができないものもいましたが、ガガンボやユスリカ、センブリ科の幼虫など様々な水生昆虫のいることがわかりました。

2日目も3日目も最高気温が約2℃と寒く、さらに水の中に入りっぱなしの調査となったため体は冷えきっていたと思います。それでも、一生懸命に調査をしてくれた大学生5名には感謝の気持ちでいっぱいです。5日間お疲れ様でした!(田中)

posted by 野鳥保護区事業 at 13:31| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年01月26日

標茶高校の学生さんによるタンチョウガイド

1月21日(土)、標茶高校2年生・3年生の学生さんたちによるタンチョウガイドが鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリと鶴見台で行なわれました。この日のためにレンジャーによるタンチョウ授業や野外活動を行なったことは前回のブログでもご紹介しました。

ガイド当日、サンクチュアリにやってきた学生さんたちの手には手作りのタンチョウパペットや帽子、ガイドのためのパウチなどたくさんの小道具がありました。どうやらガイドの準備はばっちりできているようです。ガイドに関する注意点やアドバイスを伝えた後、緊張した面持ちでいざ給餌場へと出発しました。

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ガイドの準備は万端です!


私は鶴見台で学生さんのガイドの様子を見ていました。まずは、ガイドを聞いてもらえるか観光客に声を掛けることから始まりました。ガイドをするわけではない私も、観光客に声を掛ける様子をドキドキしながら見ていました。ところが、学生さんはとても積極的で、すんなりと声を掛けガイドを聞いてもらっていました。私が高校生の時にはこんなに積極的に声を掛けられなかっただろうなぁ…と感心しました。

ガイドの内容は班によって様々でした。実際に生のタンチョウを見ながら、タンチョウの特徴や生態について考えてもらうクイズを出す班もありました。また、タンチョウと共に過ごしている地元の生徒だからこそ話せるタンチョウエピソードを伝えている班もありました。1回目のガイドではみんな緊張していたようでしたが、2回3回とガイドをするうちに表情や声の出し方、話し方もどんどん上達していって、観光客も楽しそうにガイドを聞いていました。ガイドを終えると、「勉強になった、ありがとう」とお礼を言ってくれたり、「頑張ってね!」と応援してくれたりする観光客もいました。中には、外国の観光客にガイドを行なう生徒もいました。わかる英単語を駆使しながら一生懸命話している姿に感動したのか、ガイドを終えた後に記念撮影を求める方も多くいました。

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タンチョウクイズに挑戦!

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タンチョウの食べ物を考えてもらいます

一日のガイド実習を終えて、「最初は不安だったけど、だんだん話すのが楽しくなった」という生徒や、「緊張したけど、笑顔で話すことができた」といった感想をくれる生徒がいました。皆さんかなり緊張していたみたいですが、それ以上に観光客が楽しそうに聞いてくれたこと、喜んでくれたことが印象に残ったのではないでしょうか。

2年生はまた2月にガイド実習を行なう予定です。今回ガイドをして出た反省点を活かし、次はもっとよりよいガイドができることを期待しています。3年生はこれで最後のガイド実習となりましたが、伝えることの楽しさを知ってもらえたと思います。地元の自慢でもあるタンチョウのことを、これからももっとたくさんの人に伝えてもらえたら嬉しいです。(田中)

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最後に標茶高校みんなで記念撮影!



posted by 野鳥保護区事業 at 14:53| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月04日

標茶高校の生徒と野外授業

11月26日、標茶高校の講師としてレンジャーが野外授業を行ないました。標茶高校では1月と2月に2・3年生の生徒がサンクチュアリや鶴見台の給餌場で来訪者に対してタンチョウガイドをしています。解説するためにはタンチョウのことを詳しく知る必要があるので、10月から計3回レンジャーが講師として授業を行なっています。今回はその2回目、生のタンチョウを観察するために鶴居村周辺を中心とした野外授業を行ないました。

初めに、道中で見つけたタンチョウの家族を観察しました。バスが近づいても全く気にしない家族であったため、バスの中からじっくりと観察することができました。成鳥と幼鳥の違いや繁殖についての話をして、タンチョウの知識を深めてもらいました。
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バスの中からタンチョウを観察

次に、タンチョウのねぐらとして有名な音羽橋へと向かいました。タンチョウはどうして川の中で眠るのか、どうやって寝ているのかを解説しました。タンチョウの一日の暮らしについて質問をしてくる来訪者は多くいます。そんな質問にもしっかりと答えられるように、実際のねぐらを見てタンチョウの暮らしぶりを知ってもらいました。
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音羽橋からタンチョウのねぐらを見る

次に、鶴見台とサンクチュアリを訪れました。この2か所は実際に解説を行なう場所なので、しっかりと下見をしてもらいました。サンクチュアリにはネイチャーセンターがあるため、館内の様子も説明しました。給餌場には残念ながらタンチョウは飛来していなかったので、詳しい行動の解説をできませんでした。それでも、実際に解説を行なうネイチャーセンター内の様子や給餌場の様子を確認できたので、本番のイメージは固まったと思います。
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実際に解説を行なう鶴見台を見学

続いてサンクチュアリの近くにある「みなくる」という施設内の展示物をみてもらいました。ここでは実際のタンチョウの重さや、よく通るタンチョウの鳴き声の秘密について知ることのできる体験型の展示物があるため、身をもってタンチョウのことを学んでもらえました。また、骨格標本や繁殖の様子を再現した展示物もあり、タンチョウの生態や体のしくみについても詳しく知ることができました。
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よく通る鳴き声の秘密を知る

最後に、農家とタンチョウとの関わりを学んでもらうために酪農家さんから直接お話しを聞きました。酪農家さんは、「はじめは牛を驚かしたり、播種したデントコーンを食べたりしてしまうタンチョウを腹立たしく思うこともあった。でも、生態を知ることでうまく共生できることを知ったし、今ではタンチョウの姿が見えないと心配になることもある。解説をする皆さんには、共生のことについてもしっかりと伝えてほしい。」と仰っていました。酪農家さんの生の声は高校生にかなり響いたようで、たくさんの質問もありました。
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酪農家さんから直接お話を聞く

今回の野外学習は、解説本番に向けてかなり刺激になったことと思います。タンチョウの基本的な情報や生態だけでなく、人との軋轢や関わり方についても実際の現場を訪れることで深く印象に残ったのではないでしょうか。こうした野外学習での経験をしっかりと解説に活かし、来訪者に伝えてもらえたらと思います。(田中)



posted by 野鳥保護区事業 at 15:10| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする