2021年07月14日

朝日新聞に掲載「風力計画地でタンチョウひなスクスク 日本西端の繁殖地」

7月12日の朝日新聞デジタルに、「苫東厚真風力発電事業」として進められている風力発電の計画地内において、タンチョウの繁殖が確認された記事が掲載されました。当会では、この計画地がタンチョウをはじめ希少鳥類の生息地でもあることから、計画の中止を求めています。

繁殖が確認されたのは、道央圏の苫小牧市からむかわ町に広がる湿地の一部です。タンチョウの生息数は、給餌をはじめとした保護活動で、約1900羽にまで回復してきました。それに伴い繁殖地も、中心であった道東から、近年は道央圏へも拡がりつつあります。この新規生息地の最前線である道央圏で、タンチョウが今後も定着できるよう、当会は関係者と連携して活動を続けていきます。

詳細は、下記URLからご覧ください。
https://news.yahoo.co.jp/articles/36342de0dba73e3cd1476d9a7610faf8dab97fb7
posted by 野鳥保護区事業 at 09:15| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月21日

オオジシギの生息状況調査を実施

 5月20日に、オオジシギの生息状況調査を行いました。オオジシギは、日本とオーストラリアを行き来する渡り鳥です。当会が実施した2020年度の調査では、全道での個体数が、2018年度比で約4割減少していました。越冬地であるオーストラリアの異常気象(乾燥や高温)が原因と考えられています。個体数の回復状況を把握するために、今年度も道内で調査を実施しています。

 オオジシギの活発な活動時間は早朝です。今時期の道東の日の出は4時頃なので、サンクチュアリを4時半に出発して現地に向かいました。

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日の出後のサンクチュアリ



 オオジシギの生息場所は牧草地や農地、湿地などの開けた環境です。調査地では、10分間に何羽のオオジシギがいるのか、姿や鳴き声を頼りに記録をとります。最初の調査地で耳を傾けてみると、オオジシギ以外にも様々な野鳥の声が聴こえてきました。

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立ち止まって耳を澄ませるレンジャー

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さえずるノゴマ


 釧路湿原が広がる調査地では、ディスプレイフライト(オスがメスに求愛するためにアピールする行動)をするオオジシギの様子を確認しました。急降下する際に尾羽を広げて「ゴゴゴー」と音をたてることから、「雷シギ」とも呼ばれています。まるでジェット機のような大きな音なので、「30cm程の体で、どうしたらそのような音が出せるの?」と聞いてみたくなりました。

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急降下するオオジシギ(左が頭部)

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調査中に現れた1羽のタンチョウ



 最終的に、鶴居村周辺の全ての調査地(4地点)でオオジシギを確認しました。2020年度の調査で確認されたのは、1地点だけだったので、個体数は回復している印象を受けました。はたして全道ではどのような結果になるでしょうか。

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ブログ執筆中、窓の外で鳴いていたオオジシギ

 当会のオオジシギの保護活動については、以下もぜひご覧ください。

フェイスブック
https://www.facebook.com/wbsjoojishigi/
HP:オオジシギ保護調査プロジェクト
https://www.wbsj.org/activity/conservation/endangered-species/oojishigi-project/
スタンプ:オオジシギのズビャークくん
https://store.line.me/stickershop/product/3174028
【記:田島】



posted by 野鳥保護区事業 at 16:06| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月08日

タンチョウ保護区の巡回

5月6日に、鶴居村内にある古山野鳥保護区温根内の巡回に行きました。
ここは1993年に土地所有者と協定を結んだ12.9haの山林と湿地です。釧路湿原に流れ込むオンネナイ川に沿って、幅200〜300m程の谷状の湿原に3か所ある保護区の1つです。上流部にある別の保護区では一時期タンチョウの営巣が途絶えましたが、ハンノキを伐採しヨシ原を復元する環境管理で、2002年から再営巣が確認されています。このような活動が実り、古山野鳥保護区とオンネナイ川流域の合計3つの保護区を含む126haは、タンチョウの生息環境として、2011年に釧路湿原国立公園区域に追加登録されています。
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丘陵地側から見た保護区

今回は、まだ葉が茂らずに見通しの良い時期を選び、地上からアプローチしました。林道で行けるところまで車で入り、車を降りてから主に針葉樹の植林地を歩くこと30分。湿原を見渡せる丘の縁に出た瞬間、白い影が見えました。双眼鏡で確認すると2羽のタンチョウです。いきなり会えるとは思わなかったのですが、レンジャー2人は感動もそこそこに、タンチョウが2羽の成鳥であることから、時期的にヒナがいる可能性があるため、彼らを警戒させないように、慎重に観察を続けました。
湿原内の白い点2つ.jpg
湿原内の白い点2つ
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保護区内を利用するタンチョウ
(オートフォーカスでピントの合わない写真しか撮れず失礼します)

2羽とも足元を警戒する様子がなく、藪の隙間から垣間見える足元にも、期待する小さな茶色のヒナは見つかりませんでした。30分程の観察で、現時点ではこのタンチョウの繁殖は失敗している可能性が高い、と判断しました。抱卵中、大雨による増水などで巣が水につかり、卵が死んでしまうことがあります。その場合は1ヶ月程間をあけて再営巣することもあります。その頃は葉が茂っているため、ハンノキ林が多いこの一帯での確認は困難ですが、再営巣に期待しましょう。 

調査中のレンジャー.jpg
タンチョウ観察中のレンジャー

丘陵部では30〜40年程のトドマツの植林が多く、今では笹薮と化した伐採時の林道の跡もありました。湿原の縁では、伐られなかったミズナラの大木もところどころに残っています。まだ葉が拡がらない広葉樹の周りでは、この時期にしか届かない光を受けて咲く、ヒメイチゲの小さな白い花がきれいでした。
ヒメイチゲ.jpg
ヒメイチゲ

今年度初めての保護区の巡回で、報告書などのデスクワークに追われる中での、良い気分転換になりました。センターに戻り、現地で拾った羽を調べるとフクロウのものでした。また雨具の胸に上ってきたダニもお土産になってしまい、女性スタッフからひんしゅくを買いました。次の機会では、繁殖に成功したタンチョウの親子に出会いたいものです。【原田記】
posted by 野鳥保護区事業 at 14:57| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする