2024年01月22日

標茶高校性によるタンチョウガイド

 1月20日(土)に標茶高校の2・3年生によるタンチョウガイドを当サンクチュアリと、鶴見台にて実施しました。この日のために、生徒たちは授業や野外実習により知識を深めたり、ガイド用の小道具を手作りしたりと準備を進めてきました。
 当日、生徒たちが標茶町から鶴居村に到着すると、早速ガイド開始です。準備万端の様子だったので「さあどんどんガイドしていこう!」と送り出しましたが、一言目を話しかけるのが少し緊張するようで、声をかけるのを少しためらっている様子でした。「しっかり話を聞いてくれるだろうか」「話しかけて怒られたりはしないだろうか」という不安な気持ちはとてもよく分かります。それでも、勇気を振り絞って声をかけてみると、不安とは裏腹に、とても興味深く話を聞いていただき、「ありがとう」「とても勉強になりました」といった言葉をいただくことができました。その後、自信がついた生徒たちはどんどんガイドをすることができ、一歩踏み出すことの大切さも感じてもらえたのではないかと思います。

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<ガイド中>

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<自作のタンチョウ帽子>

 また、給餌場でタンチョウを観察されているお客さんの中には、海外からお越しになった方も多くおられ、英語でのガイドも経験できました。英語でのガイドは、日本語でのガイドよりもかなり苦労したようで「あまり伝わった気がしない」「次回はもっと英語を勉強してきます」といった声がありました。タンチョウガイドに限らず、様々な言語を学ぶことで、より多くの人に伝えることができるということも感じてもらえたのでないでしょうか。

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<海外の方に指人形劇を披露>

 今回のガイド実習で3年生は最後でしたが、2年生は3月に2回目があります。今回の経験や反省を踏まえて、さらに良いガイドをしてくれることを期待しています。

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<ガイドをやり切った後の集合写真>
posted by 野鳥保護区事業 at 14:50| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年12月03日

標茶高校野外実習

 鶴居村に隣接する標茶町にある、標茶高校では、自分たちが住んでいる地域の自然を多くの人に伝える「自然ガイド」について学ぶ授業が選択できます。その授業では、当サンクチュアリのレンジャーが外部講師として、タンチョウガイドの方法等を伝えています。2月と3月には当サンクチュアリと鶴見台で実際に観光客にガイドするという実践的な授業です。
 今回はこの授業の一環として、現地で様々なことを学ぶ野外実習を実施しました。野外実習の目的は、タンチョウの観察や、様々な人からタンチョウに関する話を聞くことで、タンチョウに関する知識や経験を蓄え、ガイド本番に向けた準備をすることです。
 まずはバスで移動しながらタンチョウを探しました。今年度は、バスの中からタンチョウが見られる機会が少なかったですが、見られる場所ではしっかりと観察し、成鳥と幼鳥の違いなど、タンチョウの生態に関する話を聞いて知識を深めていました。また、移動中に立ち寄った場所で、タンチョウのことをとても大事にしている地域の方からもお話を聞くことができ、レンジャーや学校の先生からは聞くことのできない、地域住民の気持ちも知ることができました。

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<地元の方のお話を聞く生徒達>


 タンチョウを観察した後は、本番の日にガイドを行う当サンクチュアリの給餌場と鶴見台や、タンチョウの生態に関する展示のある鶴居村の公共施設「みなくる」に向かいました。これらの場所では、ガイド本番のイメージ固めや、ガイドのための細かな情報収集をしました。生徒達からは「こんな小道具も使えるね」「この情報は伝えられると面白そう」などと本番をかなり意識した会話が聞こえてきて、頼もしい限りでした。

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<鶴見台の解説中>


 最後は、鶴居村の酪農家さんのもとへ訪れ、その方とタンチョウのかかわりについて話を伺いました。酪農家さんにとってタンチョウは、牛を驚かしてけがをさせられたり、春先には牛の餌となるデントコーンの芽を食べられたりと、腹立たしく思う反面、毎年顔を出すタンチョウがいなかったら少し心配になるなどの、様々な面からのお話をしていただくことができました。人とタンチョウとのかかわり方について、考えてもらうきっかけになったのではないかと思います。

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<酪農家さんのお話を聞く生徒達>


 今回の野外実習では、タンチョウの生態だけでなく、タンチョウにかかわる人たちにも話を聞くことができました。1つの視点だけではなく、いろんな立場の方の考えを聞けたことは、自分なりの考えを持って他の人に伝えるための、良い刺激になったのではないかと思います。ガイド当日は、今回感じたこと等も踏まえて、自分達らしくタンチョウについて伝えてくれることを楽しみにしています。
posted by 野鳥保護区事業 at 16:16| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月04日

鶴居小学校6年生 総合的な学習の時間

 鶴居村には小学校が3校あり、それぞれに特色のあるタンチョウ学習を行なっています。今回は、総合的な学習の時間でタンチョウとの共生をテーマに学習に取り組んでいる鶴居小学校6年生の授業にレンジャーが講師として招かれました。

 授業は、タンチョウについて考えを深めるためパネルディスカッション方式。パネリストは、タンチョウ保護の立場から環境省の職員とレンジャーの2名、地元の酪農家さん1名とクラスの代表児童が2名、それに、鶴居村教育委員会タンチョウ自然専門員の6名です。児童10名と向かい合って着席し、討論を行いました。

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子ども達に挨拶をするレンジャー

 まずは、パネラーそれぞれの立場からタンチョウとの関わりについての話がありました。児童2名がクラスを代表して自分の考えを発表し、次に環境省の職員が国(環境省の仕事)として希少野生動植物を守っている理由を、分かりやすく説明しました。
 そのあとレンジャーが、伊藤さんから給餌を引き継いだ経緯と、村内3か所の当会野鳥保護区のこと、また、来訪者にタンチョウについて理解を深めてもらうためセンターで行なっている普及活動など、当会のタンチョウ保護の取組みについて話しました。
 酪農家さんは、タンチョウから受ける農業被害の内容について具体的な例をあげて話されました。

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伊藤さんの話は力が入ります

 守るべきタンチョウ、守ってきたタンチョウ、迷惑な鳥タンチョウ…同じタンチョウなのに、人側の立場が違うと、タンチョウに対する思いや考えが変わるという事が、子供たちにも伝わったと思います。

 休憩を挟んでの第2部は「共生について」がテーマです。

 環境省の職員は、タンチョウの数が減ってしまった理由として人の暮らしがあること、人にとっての幸せと野生動物にとっての幸せ…その両方を尊重できるのが共生だということ、そのために色々な立場の人がみんなで話し合う事が大事だと話しました。
 レンジャーは共生のための活動として給餌場以外の冬の餌場を作る冬期自然採食地整備について、具体的な活動内容を説明しました。
 酪農家さんは、酪農家全体で見ればタンチョウは害鳥かもしれないが、毎年子どもを連れてやってくるタンチョウ家族を愛おしく思っていることを伝えてくれました。家族で自分の農場を利用しているタンチョウ家族が他のタンチョウを農場敷地から追払ってくれることと、時には、そのタンチョウ家族と一緒に他のタンチョウを追い払い自分の牛を守っているという話には、児童だけではなく大人も引き込まれました。
 タンチョウ自然専門員は、「酪農家にとっては害鳥かもしれないタンチョウだけども、村の全ての農家を対象に行なったアンケート調査で『タンチョウがいなくなって欲しい』と回答した農家は一軒もなかった」と伝えました。

 その後の質問タイムでは、子供たちからレンジャーに冬期自然採食地整備について色々な質問がありました。
 どうして、そこまで大変な採食地整備を続けられるのかという児童の質問に「自然の姿でタンチョウに生きてほしい」「タンチョウを守ってきたことを世界中の人が感謝してくれているし期待もされているのでやりがいがある」「タンチョウの分散に向けて色々な人が協力してくれるので頑張れる」と回答しました。子ども達は言葉に真剣に耳を傾けノートに書きとっています。その様子から、タンチョウ保護への思いが、子供たちに伝わったことを感じました。

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真剣に話を聞く子ども達

 最後のまとめでは、タンチョウ自然専門員が「みんながしっかりタンチョウについて考えを持っていることが素晴らしい」と子ども達を褒めていました。村内のタンチョウの数の話では、地域振興や鶴居村の魅力発信を理由に増えて欲しいと考えている児童もいたし、農業被害や鳥インフルエンザを踏まえて減った方が良いと考えている児童もいましたが、子ども達は自分とは違う意見にも耳を傾けて、考えを深めていました。タンチョウとの共生について考える時、今回の子ども達の姿勢を、大人も見習わなくてはと感じました。

 今回の授業の中で、酪農家さんからの子供たちへ「みんなもタンチョウが選んでくれた鶴居村に住んでいることを誇りに思って生きてほしい」とメッセージがありました。
 タンチョウを通じて、子供たちが自分の暮らす地域に誇りが持てるとしたら、こんなに嬉しいことはありません。私たちは、そんなタンチョウを守っていることに誇りを持って、これからも活動を続けていきます。(櫻井) 

posted by 野鳥保護区事業 at 15:47| シマフクロウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする