2023年08月17日

長沼町×鶴居村 タンチョウ子ども交流ツアー 〜鶴居編〜

 鶴居村では、子どもたちの自然体験や他地域の子どもたちとの交流の機会を設けるために「KODOMO湿地交流」という取組みを行っています。その「KODOMO湿地交流つるい委員会」の委員としてレンジャーも取組みにかかわっています。
 8月8日・9日には鶴居村の子どもたちと長沼町の子どもたちでタンチョウ子ども交流ツアーを実施しました。両町村の子どもたちは、共にタンチョウが暮らしている地域ということから、以前より交流のある長沼町の子どもたちを鶴居村に招き実施しました。
 1日目のメインとなる活動は「タンチョウの巣の調査」です。普段は近くで見ることができないタンチョウの巣を調査できるということで子どもたちも大盛り上がりです。調査は2か所の巣をそれぞれグループに分かれて行いました。レンジャーが調査の進行役をしていた巣@はヨシ原の中にあり、巣材にはほとんどヨシを使用した典型的なタンチョウの巣でした。巣の大きさを測ったり、巣をのこぎりで切って厚さを測ったりとじっくりタンチョウの巣を調査しました。調査中には付近に巣の家主と思われる2羽のタンチョウもいて、かなりこちらを威嚇していましたが「お邪魔します」という気持ちで調査に臨みました。

巣@_黒沢撮 (9).JPG
巣@の調査

 一方巣Aは、巣@とは雰囲気が全く違い、沼地の中にあり、巣材にはスゲやフトイ、木の枝、植物の根などが使われていました。沼の中での調査だったので、転んでどろんこになってしまう子どもがいるのではないかとドキドキしていましたが、誰もどろんこになることはなく無事調査を終えることができました。調査終了後はお互いが調査した巣がどんなだったかを教え合い、いろんな種類の巣があることを知りました。

巣A_音成撮 (3).JPG
巣Aの調査

 2日目は釧路湿原にある温根内の右岸堤防という場所で生き物を観察する「湿原ウォーク」を行いました。始まる前にはレンジャーから双眼鏡の使い方のレクチャーもあり準備はばっちりです。湿原ウォークの中では、「湿原の中にある木の高さが変わっている」「長沼町も釧路湿原も大昔は海の中だったんだ」などとたくさんの発見をすることができました。また、この日も付近で暮らしているタンチョウを見つけ、大満足の様子でした。

温根内_黒沢撮影  (5).JPG
湿原ウォーク

 この2日間を通して、たくさんの発見や、多くの交流ができ子どもたちにとって有意義な時間だったのではないかと思います。今回は「鶴居編」ということで長沼町の子どもたちに鶴居村へ来てもらいましたが、秋には「長沼編」として、鶴居の子どもたちと一緒に長沼町へ行くことを予定しています。次回も、子どもたちに元気いっぱい交流してもらうことを楽しみにしています。

posted by 野鳥保護区事業 at 13:45| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月26日

魚類調査を実施

当会が給餌を行なっている北海道日高地域のシマフクロウのつがいは繁殖がなかなか成功できていませんでした。
そこで環境省が給餌を始め、10年ほど前から環境省の保護増殖事業者として当会が給餌を引き継いでいます。
その結果、繁殖成功率は上がってきていますが、私たちが目指すのは「自然の条件下で繁殖できる環境を整えること」です。
そのためにまず、我々レンジャーは現在の給餌場周辺の河川に魚がどれくらい生息しているのかを調査しています。
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調査は標識再捕獲法で行ないます。
まず、シマフクロウがエサを取れそうな河川に約30mの調査区間を設けます。
そして、そこに泳いでいる魚を全て捕獲、マーキングをして放流し、再度捕獲します。
捕獲方法は、1人が網を構えてその網に向かって数人で魚を追い込みます。
網を構える人は両手、両足、腰、首など身体のあらゆる場所を使って複数の網を固定します。
魚を追い込む人は、川底の石を転がしながら、素早く足踏みをして網に追い込んでいきます。
全員汗だくでずぶ濡れになり、足の爪が割れたり、青あざだらけになりました。
魚の種類や数、大きさは季節によって変化します。
これからも定期的な調査を続け、魚が戻ってくるような働きかけを行なうことで、シマフクロウが給餌なしに繁殖できる環境を整えていきます。

※魚類の捕獲は北海道から特別採捕許可を頂いて実施しています。
※魚は生体状態で計測を行い、放流しています。
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posted by 野鳥保護区事業 at 14:14| シマフクロウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年03月10日

F.A.N 春のワークキャンプを実施しました

3月2日〜3月6日の5日間、フィールド・アシスタント・ネットワーク(以下、F.A.N)の春のワークキャンプを実施しました。F.A.Nは、自然保護のために首都圏の大学生が集まって設立されたネットワークです。鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリでは毎年夏と春の2回、F.A.Nに所属する学生のワークキャンプを行なっています。

今回の主な活動は、タンチョウが冬でも給餌に頼らず自然の餌を採れるように、と整備している小川(以下、自然採食地)の水生生物調査でした。ワークキャンプ2日目はほぼ終日、魚類調査を行ないました。魚類採集用の網をそれぞれ1本持ち、魚の好む淵(流水が緩やかで深みのある場所)を中心に調査しました。すると、網にはヤマメやハナカジカ、エゾトミヨ、スナヤツメなどの魚類が入っていました。3〜5cmほどの稚魚がほとんどでしたが、中には10cmを超える大物も採れました。今回調査した自然採食地には様々な種類の魚類と育つための環境が整っていることがわかりました。
魚類調査.JPG
魚類調査風景 網で魚の捕獲を試みます

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体長10cm以上のヤマメも採れました!

3日目は、午前中に底生生物調査を行ないました。底生生物調査では、ある地点の底質を掘り起こし、その中に潜む生き物を探し出します。この調査では、たくさんの水生生物を採集することはできませんでした。ところが、去年の夏のF.A.Nの活動で水生生物の住処になればと小石を置いて整備した場所では、個体数・種類ともに整備を行なっていないほかの地点よりも圧倒的に多くの水生生物を採集することができました。これにより、小石を置くなどの整備をすることで自然採食地の環境をより多様にし、様々な水生生物を増やすことができるのではないかと期待が高まりました。

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底生生物調査 底質の中にいる生き物を探します

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前年の夏の整備の様子 小石をたくさん置いていきました

午後は採集できた水生生物の同定を行ないました。カゲロウやトビケラなど、詳しい種名まで同定することができないものもいましたが、ガガンボやユスリカ、センブリ科の幼虫など様々な水生昆虫のいることがわかりました。

2日目も3日目も最高気温が約2℃と寒く、さらに水の中に入りっぱなしの調査となったため体は冷えきっていたと思います。それでも、一生懸命に調査をしてくれた大学生5名には感謝の気持ちでいっぱいです。5日間お疲れ様でした!(田中)

posted by 野鳥保護区事業 at 13:31| タンチョウ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする